たかつか接骨院   はり・ きゅう治療院  ☎03(3978)1127 東京都練馬区東大泉4-24-1 フラワーエース大泉学園1階

松ぼっクリ通信

高野台松本クリニック 松本不二生先生のアドバイスです。

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筋肉のことをもっと知ろう

 

 35年前、医者になりたてのころと比べると、一番ちがうのは筋肉の見方が変わったことです。筋肉と言えば肉離れや打ち身ぐらいしか思いつかなかったのが、今では体中の痛みやしびれの原因を探るときに筋肉の故障を調べるのが必須だと考えています。今回は筋肉のお話です。

 

1 肩こりや筋肉痛は医学部で教えない

 

 日本だけでなく世界の医学書を調べても、肩こりや筋肉痛を細かく書いている本はありません。医学がダイナミックに役立つようになったのはほんの最近で、これまでの専門書は「いかに命を助けるか」について書かれていました。栄養状態が改善し、病気で亡くなる人が減って長生きが当たり前になった現在では、「死ぬようなことはないが、なってみると不快でつらいからだの故障」が増えてきました。その一つが筋肉に原因があって起きる様々な不調(痛み・しびれ・まひなど)で、よくある症状なのですが、本人も筋肉が原因とは思わず、診断でも見誤りやすいものです。

 

 運動不足の人が急に体をいっぱい使うと「筋肉痛」になりますが、ここで言う筋肉の故障は別物です。きつい運動や打ち身などの外傷をきっかけとして起きることもありますが、多くの場合、仕事で行う繰り返しの作業、日常生活で行っているしぐさやくせ、疲労の蓄積や睡眠時間の不足、栄養のアンバランスなどが合わさって故障します。まれに自分で触って痛い筋肉を見つける人がいますが、ほとんどの人はさわって痛む場所を自覚せず、神経痛や関節痛、ときには内臓の病気と誤解されていることもしばしばです。

 

2 さわらないかぎりわからない

 

 ほかの病気と見誤りやすい最大の理由が「さわらないとわからない」ことです。MRIという診断装置が現れたとき、何日もかけて検査をしていたことがわずか数十分でわかるようになってショックを受けました。しかし、筋肉のどこかにまわりよりも固いこわばりがあり、押すと痛む場所があることを明示してくれる装置は残念ながら今でも存在しません。

 

 また、患者さんが痛いと自覚している部位の直下に原因となる筋肉があることはまれで、少し離れたところにみつかることが多いのです。筋肉の端には起始停止という2か所の付着部があって、ここに痛みを感じることが多い一方、故障そのものは筋腹(筋の真ん中)に多いのが一つの説明です。さらに全身にはりつめられた神経の仕組みによって遠く離れたところに痛みを感じることがあります。こういったわかりづらさがあり、一見するとなんだか適当に説明をつけているようだし、画像診断のようにはっきりわかる証拠(データ)もなく、「押して痛いから、ここが原因」と言われても…ちょっと納得しずらいかな?と思う気持ちはよくわかります。

 

3 例を挙げると…

 

 手首が痛いという相談では前腕筋の故障が理由のことがとても多いです。五十肩の大半は腱板という肩口の筋群に故障がありますが、患者さんが自分でもんだりシップを張っている部位はほぼ「はずして」いることが多いですね。

 

 腰痛は一つの病気ではなく、脊椎やその周りにあるたくさんの付属構造物に「何かが起きている」ときに感じる症状です。筋肉はその原因の一つなのですが、痛みの原因部位(筋)と自覚症状の部位(腰痛)がけっこう離れていることが多いです。何年も痛いという相談でも、実態は「筋肉の故障」だったことはめずらしくはありません。

 

 股関節痛、膝の痛み、下腿・足の痛み、坐骨神経痛。こういった相談でも筋肉の故障が隠れていることがあります。骨や関節の故障に付随して起きていたり、単独でおきていることもあります。ながらく神経痛、関節痛だと思っていたらじつは筋肉が原因と言われてびっくり!ということがあります。その反対もありますから、レントゲンなどの検査と触診などの診察を組み合わせて診ることがとても大切です。

 

4 セイケイゲカはバックカントリー

 

 バックカントリーとは整備されていない自然状態の野山のことです。都会を離れて観光地に行くと「やっぱり自然はいいなあ!」と思ったりしますが、ほんとうの自然は過酷で何が起きるかわかりません。道もなく、毒虫も蛇もいます。ルールがないのであらゆることを想定して準備しなければ、入ることが危険です。

 

 整形外科医として長年過ごしてみると、循環器科、消化器科のような内科系の診断学は整然としてきれいに見えます。先人たちの努力があってそこまで来たことはわかっていますが、それに比べると整形外科の世界はワイルドです。ホネ、カンセツ、シンケイ、キンニクそのほかなんでもあり!道はありますが、舗装路以外に農道・林道、それどころかシングルトラックの山道があり、けものみちと間違えそうなところもあります。

 

 整然とした都会の町並みは美しく見えますが、私としては山道に入ると楽しいのです。何でもありだから、役に立つことなら何でも試してみる。危ないと思ったら、引き返す。崖から落ちたりせず、道迷いもせずになんとかゴール(山の頂上)に着いたらきっと楽しいはず。そう思って仕事をしています。

 

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魔法の弾丸

 

 先日、鍼や漢方を研究する学会に参加した時のことです。東洋医学特有の診察をして実際に鍼を打つデモンストレーションを見ていろいろ考えました。漢方は私も使っていますが、鍼にはまたちがった考え方があるようです。どんな治療法にも得手不得手があって、東洋医学も万能ではありませんが、ときにはすばらしい効果があることも知っています。と同時に、同じ症状を治療するなら西洋医学のほうがはるかにスピーディで確実に治せる場合があることも知っています。

 

 独特の診断・治療法は世界中にたくさんありますが、ほかでは見落としている治癒のメカニズムを上手に使っている方法があるかもしれません。そういったすべてをかみわけて、「ワンストップで必ずベスト」の治療を提供できる病院(クリニック、接骨院、治療院、鍼灸院そのほか)はありえるのでしょうか?

 

1 ベストは魔法の弾丸

 

 講演でひざの痛みに灸をしたり、くびが回らない人に鍼を打った症例などの説明がありましたが、(この症状ならマッサージのほうが効くのでは?)(これは薬のほうが絶対早いはず!)と内心思うケースもありました。でも、すべての治療の神髄を会得している人はいないのです。まったく逆に、(この例だったら鍼が絶対いい!)ということもあるでしょう。

 

 最高の治療とは、「年齢・体質など個人の特質に関係なく、副作用もなく、一発で、苦痛もまったくなく、100パーセント症状が消えて、再発などのあとくされもない治療」のことです。パッと飲んだらあっという間に治るクスリという考えを魔法の弾丸と呼びますが、言い換えると「奇跡」が最高の治療であって、これはムリな相談です。では、今ある無数の治療法の中から、ある人にとって一番いい方法を見つけられる医師(治療家、ヒーラーあるいはコンピューター?)はいるのかな?これが気になります。

 

2 人は死ぬもの

 

 こういう仕事をしていると、根っこの部分ではいかに生きるか・死ぬかが問題だと感じています。永遠に生き続ける話(不老不死の伝説、手塚治虫さんの「火の鳥」など)は魅力的ですが、そんなに長く生きて楽しいのか考える必要はあるでしょう。

 

 映画「永遠に美しく」のように、腹に向こうが見えるほどの大穴が開いてもアタマがちぎれても生き続けられたら恐ろしい気がします。SF小説「老人と宇宙」では、現役引退した年寄りたちが軍に入隊し、最新のテクノロジーで強化された新しい肉体を与えられてエイリアンと戦います。一度死んだようなものだから心おきなく戦えるし、ふだんはスーパーボディで好きなことをやり放題というわけで希望者が続出します。

 

 映画「アンドリューNDR114」は人間そっくりのアンドロイドが主人公です。はじめはロボットっぽいのですが、しだいに改良されてほとんど人間と区別がつかなくなります。ところが一緒に暮らしている人間の家族はどんどん年を重ね、世代を交代していきますが、アンドリューはまったく年をとりません。かわいがっていた赤ちゃんが成人し、やがて年老いて亡くなっていくのを見たアンドリューは決心し、最新のテクノロジーを使って人間に生まれ変わります。人間になれば、自分も年をとって死んでいくことができるのですから。

 

3 AI(人工知能)ならできる?

 

 さて、すべての診断・治療法に精通し、酸いも甘いもかみわけて、100パーセントもっともいい治療法を見つけられる診断法はできるのでしょうか?どんなに研鑽しても一人の人間には不可能だと思います。ではAIならどうでしょうか?

 

 世界中の研究機関、大学病院や学会から知識を集め、代替治療のみならずちょっと怪しいがひょっとしたら役に立つかもしれない治療法まで情報として飲み込み、思い込みや偏見などの人間くささとは無縁。でもアンドリューのように人間の弱さも理解して、ときにははげまし、ときには慰める。すべては電子世界のアルゴリズムで動いていても、限りなくかんぺきに近い未来の医師は、クラウドを使って世界中に現れるかもしれません。今はわかりませんが、案外近い将来にみなさんの街に来るかもしれませんよ。 

高野台松本クリニック 松本先生の健康アドバイスです。

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転ばずに動く!

 

 転ぶ人がとても多い。最近のクリニックでの印象です。人間の赤ちゃんは生まれたとたんに歩くことができないので、1年以上かけて歩くことを学びます。このときに脳や神経が学習して体の動かし方を覚えるのです。記憶と同じように、覚えたことは忘れます。立ったり歩いたりは生まれつきの能力ではなく学んだことです。だから忘れたら、もう一回練習しなおす。そうすればまた歩く能力はよみがえってきます。

 

1 立ち上がりのひとふんばり

 

 赤ちゃんが始めて立ち上がった時を見てみましょう。それまでつかまって立っていたのに、はじめて立ち上がる時です。ゆっくりとお尻を持ち上げて膝を伸ばしながら、床に置いた手をそっとはなします。お尻の筋肉を使って用心深くからだをおこし、最後に背筋を伸ばします。こういう動きができるように、数ヶ月の間ハイハイをしたりつかまり立ちをしてお尻の筋肉を鍛えたり、バランス感覚を磨いてきました。

 

 そっと立ち上がる動きをするにはおしりの筋肉がしっかりしていることが必要です。ところが座り仕事が一般的になり、車や電車での移動が増えたためか殿筋が弱くなっている人が増えています。殿筋が弱いといざという時に踏ん張りが利かず、よろけて転んでしまいがちです。

 

 そこでお尻を鍛えましょう。やることはとても簡単、ゆっくりと立ち上がるだけです。はじめのうちはどこかにつかまってかまいませんから、そうっとお尻を浮かして、椅子の座面から数センチ浮かしたまま踏ん張ってみましょう。慣れてくるに従い浮かしている時間を伸ばしていきます。これは等尺性筋収縮という効果的な筋トレ法です。毎日無理のない範囲で繰り返してみましょう。だんだんと立ち上がるときにからだがしっかりしてきたことに気がつくはずです。

 

2 もう一歩前へ

 

 よく転ぶという人たちの特徴の一つは、足を使う前につかまろうとすることです。短い時間ならつかまらないでも立っていられるが、つかまったほうが安定するのでつかまっている。こういう人ならつかまろうとして手がすべっても、つかまったものがぐらついても転ばないで済むでしょう。

 

 ところが文字通り体を支えるためにつかまろうとすると、手がすべったりつかまったものがぐらついてだけで転んでしまいます。これを避けるためには、いつももう一歩前に足を運んでからつかまるようにすることです。手を伸ばしてつかまろうとするのではなく、つかまるものに十分体を近づけてからつかまるようにしましょう。

 

3 足元から動く

 

 まだリモコンがなかった頃のテレビでは、チャンネルを変えるときにテレビのところまで歩いて行ってがちゃがちゃチャンネルを回していました。部屋の明かりはひもをひっぱって点灯していましたし、風呂を入れるときはガス釜のそばにしゃがみこみ火をつけていました。今から見るとずっと不便でしたが、家の中でいまより足をたくさん使っていました。今はリモコンやスイッチでいろいろなことができるようになりましたが、その分足腰を使う機会が減ってきています。

 

 転びやすい人の別の特徴は足を動かさずに用を済まそうとすることです。すわったまま、上半身をひねって横や後ろにあるものを取ろうとします。椅子やベッドに座っていて転んだという人の話を伺うと、立ち上がってからだを動かす手間をはぶこうとしてバランスを崩していることが多いようです。

 

 だから無精がらずに足をこまめに動かすことです。体の向きを変えるときは体をひねるのではなく、足元を動かして向きを変えましょう。

 

4 危なっかしいときは三点指示

 

 登山をしたことがある人はご存知と思いますが、ゴツゴツした岩場など危ないところを通る時には三点支持のテクニックを使います。三点支持とは合計4本の手足のうち必ず3本を地面や岩に置き、残りの一本だけを動かす方法で、たとえば左手・両足を固定したまま右手で上の石をつかみ、しっかりとつかめたら今度は他の手足のどれか一本を動かしていきます。

 

 つかんだ手がすべったり岩の上に置いた足が滑ったとしても、かならず残りの3本で体を支えているので危険なところでも安全に通ることができる方法です。

 

 この三点支持のやり方を家の中でも利用してみましょう。足腰の力が弱っている人がせまいところから物をとりだしたり玄関など段差のあるところを上り下りする際に、しっかりしたところを選んであちこちにつかまりながら移動してみましょう。がっちりつかめた、きっちり足で体を支えられたと確認してから別の手足を動かすようにすれば、怪我をする機会がぐっと減るはずです。

 

高野台松本クリニック 松本不二生先生のアドバイスです。

どんな治療が効くのかな?

 

  何度もくりかえし読む本の一つにバーナード・ラウン博士の「医師はなぜ治せないのか」があります。現在AED(自動体外式除細動器)が病院や街のあちこちに設置され、突然の心停止からたくさんの人たちを助けられるようになってきました。そのもととなる体外除細動器を発明して、ノーベル医学賞をもらったのがラウン博士です。では、えらい学者先生の成功談の話かと思うとさにあらず、駆け出しのお医者さんが失敗を繰り返し、さまざまな問題にぶつかりながら「何が患者さんを良くしているのか」「治るきっかけとは何なのか」を探求していきます。本をのぞきながら考えたことをお話ししましょう。

 

1 名医の秘密

 

 若きラウン医師の恩師レヴァイン博士は名医として有名な方でした。博士の回診では、患者さんと気軽に会話しながらちょっとしたヒントを見つけていきます。寝汗で枕が濡れている患者さんに気がつくと、枕を返して乾いたほうを上に向け「ほら、これで寝やすくなるよ!」と声をかけます。ちょっとした顔の表情や体の動きから重大な兆候を見つけ出し、まわりの医師にはなんだかわからないうちに診断を下し、さっと薬を出すとこれがまたよく効くのです。

 

 ところがある若手の医師が「レヴァインの治療はいい加減で全然理論的じゃない」と言って、回診に参加しなくなりました。いっぽうラウン医師は(確かに診たてははっきりしないのに、なぜあんなに良く効くのだろう?)と不思議に思い、なんとかレヴァイン博士の診たての秘密を会得しようと週に六日回診に通うようになりました。

 

 それから11年間、ラウン医師は足しげく博士のもとに通います。しだいに秘密がわかったラウン医師はなげきます。「なんと物分かりの悪かったことか!」

 

2 常識を乗り越える            

 

 そのころ心筋梗塞にかかった人たちはベッド上で何か月ものあいだ絶対安静を保つように指導されました。梗塞になった心筋に無理がかかれば心臓が破れて突然死をするのではないかと医師たちが恐れたためでした。

 

 しかしラウン博士は考えます。ほんとうの急性期を過ぎたなら、むしろ体を動かして少しずつ心臓を鍛えなおし、心臓のポンプ作用を働かせたほうが患者は元気になるのでは?そこで急性期を過ぎた患者さんを慎重に動かし始めると、そのほうが早く確実に患者さんが元気になることを発見したのです。このやり方は、現在心臓リハビリテーションと呼ばれていて、心筋梗塞後の標準治療の中に組み込まれています。

 

3 その人を知る

 

 病棟にひどい不整脈の患者さんが入院していました。ところが患者さんは腰痛にとても困っていて、これを何とかしてほしいと訴えていました。でも不整脈の治療で電気除細動を行う必要があったので、ラウン博士は患者さんに説明してみます。「それをやったら腰痛が治るの?」 ラウン「ええ治りますよ!」

 

 聞いていた研修医が「そんなばかげた話は聞いたことがない!」と言いますが、博士は耳を貸さず除細動治療を行います。終わった後、患者さんは憤然としてこう言いました。「あの若い医者に言ってやるんだ!バカなのはあんたのほうじゃないか!みごとに治ったよ!って。」

 

 見るからにはかなげな若い女性が入院していました。ちょっと歩くだけでも苦しそうにしています。心臓弁の働きが悪く心臓が弱っていると診断されていました。細かく診察したのちに、博士はこう伝えます。「いろいろ調べた結果、だいじなことがわかりました。」 「なんでしょうか?」 「あなたの手がじっと汗ばんでいることです。それ以外は何ともありません。汗のことを気にせずに、握手のときは相手の手をしっかりと握り返しましょう。あなたの問題点はそれだけです。」

 

 入院して以来、患者さんは初めて微笑みます。そして1週間後、元気に退院していきました。

 

4 治癒力を発動するもの

 

 「治せる医師・治せない医師」「医師はなぜ治せないのか」の2分冊が発刊されて20年以上たっていますが、今でも時折ページをめくっています。11年の間お師匠さんのもとに通いつめてラウン博士が会得した名医の秘密とは何だったのでしょうか?

 

 本のなかでははっきりと述べられていませんが、オリジナル英語版の表題は「失われし治癒の技~医療における思いやり(compassion)の実践」です。このcompassionという英語は、日本語の「思いやり」よりもずっと深い意味を持つと思います。相手の心にもう一人の心が響きあい、からだに本来備わっている治癒の力が発動される。こんな感じでしょうか。ラウン博士には及びませんが、思いがけない治療の経験は医師ならだれにでもあるのでは?と考えます。仕事に疲れたとき、読むと少し元気が出る本です。

高野台松本クリニック 松本不二生先生の健康アドバイスです。

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なんでもないからタイヘンなのだ!

 

からだの不調を感じ始めたけれど、何が原因なのかさっぱりわからない。こんなときは不安になるものです。思い当たるフシがないので何かわるい病気になったのではと心配する人もいるでしょう。でもちょっと落ち着いて考えると、一見何もないように見えるところに理由が見つかるかもしれません。

 

1 やりすぎ君の場合

 

やりすぎ君は真面目な性格で、締め切りに合わせて残業することもままあります。残業が続くと疲れを感じることもありますが、休日の家族サービスもできるだけやっています。忙しいけれど、まわりも同じくらい忙しいので、とくに気をとめていませんでした。

 

あるとき同僚が突然退職し、忙しい時期に重なったため、仕事量が急に増えて連日の残業が続きました。持ち前の几帳面さで仕事をこなしていましたが、肩や背中が張って、頭痛を感じ、しだいに腕が痺れてきました。病院でははっきりしたことはわからず、症状はなかなかスッキリしません。いったいオレの体はどうなっているのだろう?と心配になってきました。

 

2 のんびりさんの場合

 

のんびりさんは定年退職し、朝起きたらゆっくりとご飯を食べて新聞をじっくりと読み、ごろっと寝転がって過ごしていました。最近用事があって街中に出かけたときに、からだが重苦しく足が疲れやすいことに気がつきました。散歩をしてみると、ふらつきを感じ、腰が重だるくなります。何かの病気かな?と心配になってきました。

 

3 いっぱいさんの場合

 

いっぱいさんは会社を経営しています。売り上げは着実に伸びていますが、安泰とは言えず、あちこちを駆け回る毎日です。家庭にじゅうぶんな時間を割けないので家族には申し訳なく思っています。ところが、田舎の父が急に病気で倒れてしまいました。一命は保てたものの、父の生活をどうするか、田舎は行くだけでもたいへん、妻にも負担をかけているし、会社は忙しい時期にさしかかっています。

 

そんなある日、突然息苦しくなって目が回り、口のまわりや指先が痺れて救急車で病院に運ばれてしまいます。検査でおかしな点は見つからなかったものの、実は深刻な病気が隠れているでは?と心配です。

 

さて、三人には何が起きたのでしょうか?

 

4 理由は「なんでもない毎日」にあり

 

やりすぎ君は仕事を多く抱えていて、じゅうぶんな休養ができていません。現在ほとんどの仕事は、からだ全身を使うよりも一部分だけを繰り返し使う作業が大部分を占めています。とくに手を使う仕事、なかでもパソコン作業では1日何千回とキーを叩いたりクリックするので、腕の筋肉の疲労は著しい一方、くび・肩はじっと固めて動かさないためコリがひどくなります。これを毎日続けると累積疲労でくびから肩・腕にかけて痛みや痺れが生じてきます。本人にしてみれば「普通に働いているだけ」なのに困った症状が出てくるので、原因がわからないと考えてしまいがちです。

 

反対にのんびりさんは急に体を動かさなくなったのが原因です。仕事に出かけることでそれなりに体を動かしていたのが、退職後のんびりとしている間に著しく体力・筋力が落ちてしまったのです。このパターンの相談はけっこう多いです。

 

いっぱいさんの場合は、ストレスが問題です。ふだんからストレスレベルは上限ギリギリだったのに、親の病気というひと押しで心の救難信号が灯り、神経系のバランスを崩してしまったのです。

 

5 メリハリのある暮らしをしよう

 

やりすぎ君のように、いつも同じ暮らしをしていても、疲労が積み重なれば体の故障が起きます。がんばるときはがんばるけれど、休養をしっかりとって、スポーツや遊びで体にちがう刺激を入れることが大切です。のんびりさんは楽をし過ぎたために、普通の暮らしをするにも困るくらい体力が低下してしまいました。すぐに疲れてあちこちが痛くなりますが、気を持ち直して体を使い始めればしだいに体力が戻り、痛みも軽くなってきます。

 

いっぱいさんのようなストレスの問題は、現代人の生活にあまねく存在すると言っていいでしょう。ストレスはありすぎてもなさすぎても問題で、ちょうどいいレベルで負担がかかっているときに体・心にはりが生まれ、元気に暮らすことができます。ときには生活を見直して、もっとゆったりとした生活に変えていくことも必要です。

 

外来にこういった相談で訪れる方は決して珍しくありません。薬・リハビリだけでの解決はむりなので、患者さんと相談しながら、生活の組み直しをお手伝いできればと考えています。

高野台松本クリニック 松本不二生先生の健康アドバイスです。

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ツメからわかる!

(アーカイブ;2003年11月号より)

 

ツメは皮ふの一部だということは、みなさんおわかりだと思います。ときどき、「ツメがうすくなってきたけれど、これってカルシウム不足のせいかな?」と聞かれることがありますが、カルシウムは関係ないですよ!ツメはケラチンというたんぱく質でできているから、体ぜんたいの新陳代謝のぐあいと関係します。だから、全身に影響のでるような病気があったり、栄養状態がかわったりすれば、ツメの厚さも変わることがあります。

 

ツメの大きな特徴は、かたいことと半透明なこと。だから、皮ふの下にあって見えないはずの血管の流れも、ツメをとおして見ることができます。これを利用しない手はない!ということで、お医者さんはツメの色を見たり、押して血のめぐりを確かめたりするわけです。

 

今回は、ふだんはめだたないけれど、けっこうだいじなツメにスポットを当てて、お話してみましょう。

 

1 つめの色からここがわかる!

 

そう、毛細血管の流れが見える「まど」なんです、ツメは。貧血のある人はツメのピンク色がうすくなります。血液がどろどろしている人(漢方でいうおけつ、ストレスと関係が深い)ではツメの色が暗くなります。ゆびさきをつまんでぱっとはなして、ピンク色がもどってくる時間をみれば、血液の流れるスピードを知ることができます。ツメを押したままじっと見ていると、ピンクの部分と白い部分がゆれているのがわかります。そう、拍動しているんですね。

 

ツメそのものの色も確認してみましょう。半透明の白っぽい色がふつうです。みかんやにんじんなど、黄色いものをたくさん食べると、ツメも黄色っぽくなります。タバコを持つ指のツメは色がつきますし、塗料やオイルなどが残っていれば、職業が予想できます。一部分が黒っぽくなっているときは?靴がきつめでつま先が圧迫されていると、内出血をくりかえして爪が黒くなることがあります(ブラックネイル)。つけねからさきまでたてに黒線が入る場合は要注意。お医者さんに一度みてもらった方がいいでしょう。

 

2 つめのかたちからここがわかる!

 

1、2ヵ所だけ、ツメが厚くなっている人はいませんか?たいていの場合、これはミズムシです。ツメの切り口を見ると、ぱさぱさした感じがしてきれいではありません。意外とポピュラーなのですが、ミズムシだと思っていない人が多いようです。厚いうえに黒っぽくなっているときはミズムシのこともあるけれど、カンジダ症のこともあります。どちらもカビという点で共通しています。つめがうすくて平べったくなったり、へこんだりすることがあります。これは貧血のサイン。反対に指先が全体にふくらんでツメも丸まっている人がいます。生まれつきのこともありますが、呼吸器系の病気をかかえている場合も。高齢の人は、病気でなくても、つめが厚くなり曲がってくる人も多いようです。

 

つめにみぞがある場合はどうでしょう?たてみぞは、つめの生えてくるつけね(爪母といいます)に一時的な故障がおきているだけのことが多いようです。よこみぞは、なにかからだにストレスがあったしるしです。ただしちょっと前のできごとですから、心配ありません。思い返してみれば、肉体的・精神的なストレスの理由があるかもしれません。

 

3 つめのまわりからここがわかる!

 

ゆびの先っぽからながめてみたら、ツメのはじっこはちゃんと見えていますか?まわりの肉にかくれて見えなくなっていたら、ふかづめのしすぎです。とくに、足のツメは長めにしておいたほうが痛くなりにくいようです。ツメのつけねに比べて先っぽのわん曲のほうが強くなっているときは、靴の中でツメが圧迫されているサインですが、長い間これが続くとツメの下の肉の部分がかたく縮まってしまい、靴に関係なくツメが丸まってしまいます。こうなってしまうとちょっとやっかいなので、ふだんからきつい靴はさけたほうがいいと思います。ツメのヘリの肉が赤くなって痛むときは化膿していることが多いようです。

 

ツメだけでもいろんなことがわかるでしょ!だから、診察のときはマニキュア・ペディキュアを落としてきてくれたほうがありがたいです。ちっちゃい子が、おかあさんのまねをして何か塗っていることも多いけれど、あれはちょっとかわいいですね。

高野台松本クリニック 松本不二生先生の健康アドバイスです。

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自分マッサージをやってみよう!

 

クリニックで仕事をしているスタッフや私も、時間があるときにおたがいを治療することがあります。「便利でうらやましい」と声が聞こえそうですが、それはちがいます。家でくつろいでいる落語家さんに「落語を聞かせろ!」と要求するのと同じで、そこには節度が求められます。ほんとうに困ったときにはちゃんとお金を払って治療を受けますし、できるだけ自分で体のケアを行っています。そんな時に役立つのが「自分マッサージ」、今回のお話です。

 

1 なでさすりは自然にできるもの

 

だれかが苦しがっているとき、そばにいる人が思わず手を伸ばし、痛いところをさする。これは私たちに生まれつき備わった性質の一つです。仲間に手を触れてもらうと安心し、それだけでも緊張がゆるみ、痛みも軽く感じるようになります。これはサルの毛づくろいと全く同じで、私たちがご先祖様から受けついだものです。

 

触っただけで安心させ、触ってもらっただけで安心できる。マッサージのやり方を考える前に、このことをまず押さえておきましょう。これからお話しする自分マッサージでも、自分がいやになるようなやり方をする必要はありません。少しづつ、毎日続けられるように。これが自分マッサージのやり方です。

 

2 トリガーポイントのことを知ろう

 

トリガーポイントは、約60年前にアメリカの医師ジャネット・トラベルさんが命名したもので、筋肉の中に痛いしこりができたものを指します。やはり医師であったお父さんのがんこな肩の痛みを治そうとしていろいろな治療を試み、その結果トリガーポイントを見つけて注射をすれば痛みがなくなることを発見したのです。

 

のちにジャネットさん自身も肩痛で大好きなテニスができなくなり、今度はお父さんに治してもらいました。この知識を生かし、二人はいろいろな患者さんの痛みの治療にも成功するようになりました。しだいに評判が高まってきたある日のことです。当時のアメリカ大統領ケネディ氏から相談があり、ジャネットさんはケネディ氏の頑固な痛みを診療して治しました。以来大統領付きの医師となったジャネットさんは共同研究者のサイモン博士といっしょに、今までの経験をもとにして有名な「トリガーポイント・マニュアル」を書きあげます。

 

トラベルさん自身はおもに注射でトリガーポイントを治していたのですが、大きな筋肉や届きにくいところにある筋肉は注射だけで治すのが難しいことも気づいていました。著書の中では注射のほかにマッサージやストレッチも書かれており、原因や予防法にも触れています。注射だとお医者さんしかできませんが、マッサージなら患者さんが自分でできる方法です。

 

3 自分マッサージはむずかしくない

 

そこで自分マッサージをお勧めしたいのです。むずかしい技術はなく、誰でもできる方法です。プロの代わりにはなれなくても、自分のカラダだから痛さの調節もできます。痛みに強い人はそれなりに、弱い人はとても軽いマッサージから始めればいいのです。

 

はじめは上手にできず、こんな感じでいいの?と思うかもしれません。しかし、いつでもできるのが強みです。「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」とことわざにあるように、小まめにやれば(あれ、ちょっといいかな?)と思うときがきます。そして練習していけば、だんだんと上手になっていきます。

 

重要なポイントは、繰り返しちょこっとづつマッサージすることです。からだはすぐには変化しません。血の巡りが改善し、老廃物が洗い流され、筋肉の新陳代謝が活発になり、縮んでいた筋線維がゆるみ・・・というように、順調に回復する場合でも変化は数日~数週間かかるものです。たくさんの筋に故障があり、長く患っているケースならばなおさらです。ここに自分マッサージの強みがあります。自分でできるのですから、ちょっとした時間を利用して繰り返し治療してみましょう。

 

4 自分のからだをチェックする

 

ただし、『痛みの原因である』筋肉をみつけるのが意外と難しいことも知っておきましょう。トラベルさんやお父さんも、痛いと感じるところに注射をしていたわけではありません。痛みの「原因部位」と「感じる部位」はちがうことが多いのです。クリニックでは患者さんに原因部位をマッサージするように指導していますが、患者さん自身が思ったところとほとんどちがうので、始めはとまどうかもしれません。さらに細かいことを知りたい方は、スマホやパソコンで「トリガーポイント」と検索してみるといろいろ情報が見つかるはずです。

 

また、トリガーポイントは再発することも多いのです。仕事や生活上の負担、ストレス、栄養や睡眠の問題などで発症しますから、トリガーポイントができやすい筋肉を定期的に触れて、(ちょっと痛くなってきたぞ)と感じたら自分マッサージをし、からだにも気を配る。という風にいけばベストです。

高野台松本クリニック 松本不二生先生の健康アドバイスです。

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セルフケアを究めよう

 

19世紀のアメリカは西部開拓時代として知られています。新天地を求めて海を渡ってきた移民の人たちは、広大な土地があるアメリカ西部に向かって馬車で移動していきました。定住先で木を伐り小屋を作り、開墾した土地で農業を始めるのですが、けがや病気をしても近くには病院はおろか医師も見つからないことが珍しくありません。手持ちのクスリ、土地でとれる薬草を使い、自己治療の手引書で何とかしようとしました。現代の日本では、ほぼどこでもかなりの治療を受けられますが、それでも自分自身でできること、自分でなければできないことがあります。自分で自分を元気にする方法を知る。今回のお話です。

 

1 筋肉を元気にする

 

筋肉を動かすことには限りないメリットがあります。筋肉自体がポンプになって全身の血行を助けます。関節液の流れが促進され軟骨が元気になります。筋肉から出るサイトカイン(ホルモンの仲間)が内臓や脳に働き、気分を明るくしたり新陳代謝を活発にします。消化管が揺れ動くことで腸の働きが刺激され、腸内細菌による食物の分解・吸収を助け、消化から便通までの働きを促進します。筋からの熱量産生が高まるので、冷えが改善し、余分な脂肪を消費してダイエットになります。

 

いくつになっても、どんな人でもからだを動かして損になることはありません。この数十年は、いかに人間が楽をするかを技術で競ってきた時代なのですが、筋肉を使わなすぎるのもからだに悪いということをどこかで忘れてしまったようです。

 

急激な変化にからだも心も準備ができないまま、テクノロジーはどんどん進化していきます。そんな世の中を元気に生き抜く秘訣は、用がなくても歩く・走る・上り下る時間を作ることです。旅行、スポーツ、音楽、美術館巡り、食べ歩き、家庭菜園。あるいはパートタイマーやボランティア。何でもいいので、まずはやってみることです。

 

2 からだをやわらかくする

 

私たちのからだは1週間前と比べてほとんど変わっていないように思えます。ところが細胞レベルで見るとまったくちがい、活発に新陳代謝が繰り返され、どんどん新しい成分が入り込み、古い成分が運び出されています。からだじゅうの形を作っているのはコラーゲンという物質で、コラーゲンを作る細胞が体中に配置されています。たとえば筋肉を毎日ストレッチしていると、「もっと伸び縮みできるようにやわらかくなろう!」と、筋肉内のコラーゲンがだんだんと柔軟になります。ですからこまめにストレッチをするとわりと短期間で効果を実感できるはずです。そして、やわらかくなれば身動きが軽く、けがや故障になりにくく、若々しく見えます。

 

体質的にかため、やわらかめはありますが、ストレッチを毎日続けていけば誰でもそれなりに効果は出てきます。むりせず自分が気楽に続けられるものならどんな方法でもオーケーなので、テレビ・ラジオ体操でもいいし、ヨガなどちょっとこったものにチャレンジするのもいいでしょう。

 

3 血の巡りを良くする

 

心臓から出た血管は枝分かれを続けて、最後の方では目に見えないくらい小さな血管〜毛細血管へと変わります。毛細血管は身体中あらゆるところに通っていますが、あまり使わないでいるとその一部にしか血液が流れないようになります。流れの少なくなった臓器・組織はがんばりがきかず、元気がなくなります。きつすぎない運動をまめに続けると、ふたたび毛細血管が開き血液が多く流れ始めます。酸素や栄養が行きわたり、老廃物が洗い流されるスピードが促進されるので、あたまのてっぺんからつま先までが元気になります。

 

これだけすばらしい効果が、お金をかけず毎日ちょっと動くだけでえられるのだから、こんなおいしい話はありません。そのためには歩く、または軽いジョギングで30分以上続けるのが目安ですが、まずは外に出て家の近所を歩いてみることから始めてはいかがでしょうか。

 

4 自信をつける

 

からだの不調が続くと、なにか深刻な病気があるのではないかと心配したり、よく考えればそれほど大ごとでないことを必要以上に悩んでしまったりするものです。そんなとき、自分でもできることがあると知っているだけでも気持ちが軽くなり、不安が和らぎます。

 

軽い有酸素運動、ストレッチ、そしてちょっとの筋トレ、これは健康への3種の神器です。うつや認知症の予防、慢性の病気(糖尿病、高血圧、動脈硬化、呼吸器疾患や腎臓病など)にも効果があることが知られていますから、みなさんもぜひトライしてみてください。

高野台松本クリニック 松本不二生先生の健康アドバイスです。

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おてんとさんありがとう

日頃からできるだけ太陽の光を浴びることを意識しています。いまケガのリハビリ中ですが、それでも体が空いたときは日なたに出ていきます。日光には体に良い効果がたくさんあるからです。

 

  1 ビタミンDと日光  

 

ビタミンDは皮膚で合成されるビタミンです。日光が皮膚にあたると皮膚細胞の中で作られ、血液の中に取り込まれた後肝臓に貯蔵されます。そして腎臓で活性化され体中のほとんどすべての細胞で効果を発揮します。じゅうぶんに光を浴びていればビタミンDを自分の体だけで必要量を作れるのですが、その目安は顔と両手に直接日光が当たった状態で20分くらいだと言われています。なんだ!20分くらいならと思うかもしれませんが、よ〜く考えてみると、意外と日光に当たっていない人も多いのではないでしょうか。

 

20分の目安は肌にじかに日光が当たった場合なので、窓越しに外を眺めたり、ビルの日陰を歩いているときはあまりカウントされません。また帽子、手袋やパラソルを使えば効果は減弱し、化粧品でUV対策をすればさらに効果は薄れます。屋内の照明にはビタミンDの合成に必要な紫外線が含まれないので、朝晩の通勤以外にはまったく日光を浴びるチャンスがない方もいるはずです。

 

私も病院勤めのときは日が出る前に車で出勤し、夜も遅くなってから帰宅して、休日は自宅でくたーとなっていました。だからほとんど日を浴びていませんでした。キノコやイワシ・サンマなどにビタミンDは含まれているので食事でも補えると言われていますが、当時の食事を考えると、おそらく足りていなかったと思います。日光を浴びず、食事でも補えない場合、ビタミンD欠乏の症状が出てきます。次のお話です。

 

2 ビタミンDのはたらき

 

ビタミンDといえば、骨粗鬆症の治療薬として有名です。体の中にもとからある成分(正確には合成された類似物質)なので安全性は高いですが、効果はそこそこだと考えられています。しかし、日光浴と組み合わせると(患者さんに必ず説明しています)とてもよく効く薬だと感じています。

 

ビタミンDは消化管からのカルシウム吸収を促進し、骨にカルシウムが吸着されて丈夫になるのを助けます。ここまでは有名なのですが、ビタミンDには免疫作用の調節、各種ガンの抑制作用、動脈硬化の抑制やうつ病の防止、受精卵の着床促進(すなわち不妊対策)など様々な働きがあることもわかっています。

 

そのため欠乏症状としてはくる病、骨軟化症や骨粗しょう症のほか、自己免疫疾患、動脈硬化、高血圧、うつ病の発症ともつながりがあると考えられています。先日のテレビ番組では、若い女性で原因不明の全身の痛みが続き、最後にビタミンD欠乏症と診断されたケースが出ていました。出産後のお母さんが節々の痛みのためで困っているというときに骨粗鬆症が原因のことがあり、わたしも一例経験しています。この場合授乳により赤ちゃんに栄養を取られることが大きな理由になっているのでしょう。

 

3 まだある日光の効果

 

人間をまったく光の当たらない環境で生活させると、1日が25時間のリズムになることが知られています。太古の地球は自転の速度が現在よりも遅く、そのころに人類の祖先は進化してきたので古い体のリズムが残っているのです。このリズムの狂いを調整をする仕組みがあり、光が体にあたると、脳の中にある松果体という内分泌腺からメラトニンというホルモンが放出されます。このホルモンのはたらきで睡眠や新陳代謝のリズムが調節されますから、不眠症気味の人は日中にできるだけ日を浴びることです。

 

また、日光を浴びると脳内でセロトニンが放出されることもわかっています。幸せのホルモンと呼ばれるセロトニンですから、うつ気味の人も日光を浴びる時間を増やすことです。カントリーシンガーのジョン・デンバーが歌ったように、「背中に日が当たれば」わたしたちは幸せを感じるようにできているのです。

 

4 おてんとさんとのつきあい方

 

このように日光を浴びることには良い意味が沢山あるので、みなさんにもできるだけ日光浴の機会を作るようおすすめしています。では浴びれば浴びるほどいいのかというとそうではありません。シミ・シワや皮膚ガンの発生といったリスクは紫外線と深い関係がありますから、皮膚が赤くなったり真っ黒になるほどの日焼けは必要ありません。また、日本では5月から8月の直射日光はやや強すぎるので、日焼け止めやパラソルもありだと思います。顔の日焼けを避けたい人は手足の露出を多めにすることで対応できます。

 

ちょっと前の日本では日光を浴びない生活は不可能だったのに、交通手段や仕事・住環境の変化からほとんど日を浴びないでも暮らせる時代になりました。でも体のしくみは昔のままですから、じょうずに日光浴を楽しみましょう。ランチを持って日向ぼっこ、ぽかぽかと背中があたたかい。幸せを感じるひとときです。

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